昔は切り分けて食べるのが当たり前だったようかんも、最近は個包装タイプが人気。
シンプルながら難しいようかん作りに、伝統の技が光っています。
ほんのりとした小豆の風味と程よい塩気、滑らかな食感が後引くおいしさの「CO・OP 北海道産小豆のひとくち塩ようかん」。手を汚さずに食べられるスティックタイプで、必要なだけバッグに入れて持ち歩くことができ、登山や仕事の合間などに気軽に食べられる、と2022年3月の発売以降、大人気です。
製造しているのは明治32年創業の和菓子メーカーで、ようかん作りに定評のある米屋株式会社(千葉県成田市)。開発担当の渡邊謙太さんは「この商品の主な原材料は、北海道産の小豆、北海道産てんさいから作った砂糖、伊豆大島近海の海水から作った塩と、いたってシンプル。本当に必要な原料だけを使い、小豆の風味を感じていただける商品を目指しました」と話します。
左から、米屋株式会社 研究開発部 渡邊謙太さん、製造部 鳥羽陽介さん
小豆の風味を残し、甘みと塩気のバランスを取る。食品添加物を使わずに実現するのは大変ですが、「長年のようかん作りで先輩方が試行錯誤を重ねてたどり着いた配合比率などがあり、それをベースに作っているので難しくはありません」と笑います。開発担当として、安心して食べてもらえる厳選した国産原料とおいしさに加え、製造ラインにおける作業のしやすさも大事にしているといいます。
というのも、これだけ技術が進歩してもようかん作りは手間がかかるから。同社も多くの工程を機械化していますが、小豆の性質上、炊く工程とあんを練る工程は効率化が難しく、どうしても時間がかかるそうです。
「小豆は非常に硬くて火が通りにくいので、しっかり炊き上げるには大量の水と強い火力が必要です」と説明するのは、製造担当の鳥羽陽介さん。「また、あんを練るのに時間がかかるのは、離水(あんから水分が分離する現象)を防ぐため。加熱しながら満遍なく混ぜ合わせることで、生あんと砂糖をしっかり結合させるのが大事です。かといって練り過ぎると風味が落ちてしまうので、熱の通り具合を見極めるのに神経を使います」
衛生管理や機械のメンテナンスも徹底。「安心して食べていただけるものを提供することが大前提。そこをクリアした上で、おいしさを目指しています」
思った以上に反響がありびっくりしているという渡邊さんは、「塩ようかんは夏に売れるイメージがありましたが、冬もたくさん食べていただきうれしいです。姉が山登りに行ったときも、友人がようかんを持ってきたと聞きました。この商品をきっかけに、もっと多くの人に和菓子のおいしさを知ってもらえれば」と期待を寄せます。
普段のおやつとして、手軽にエネルギー補給できる携行食として、丁寧に作られた日本の味をいかがですか?
小豆を計量・洗浄して水と一緒に釜に入れ、約30分炊きます(前炊き・写真A)。渋みやえぐみが皮から溶け出した湯を捨て、新たな水で再度約60分炊きます(本炊き・B)。小豆にしっかり熱を通し、ふっくらと炊き上げます。
炊き上がった小豆を細かく砕きながら中身と皮を分け、高速で回転する目の細かいふるいにかけて中身だけを取り出します(写真C)。皮が取り除かれた小豆を水と一緒に水槽に投入(D)。水にさらして30分ほど置くと生あんのもとになる組織が沈殿するので、不純物が混ざった上澄みを除きます。このさらし工程をもう一度行い、しっかり不純物を取り除くことで、あんの風味と滑らかさが決まります。
沈殿した成分を圧搾機にかけ水分を抜くと、砂糖を加える前の「生あん」が完成(写真E)。釜に砂糖・生あん・寒天液・塩を順に入れながら加熱・混合し、60分以上かけて滑らかに練り上げます(F)。
ちょうど良いタイミングまで練り上げたようかんを個包装に充填し(写真G)、冷却トンネルと金属検出機を通した後、10個ずつトレーに並べ、包装します(H)。包装直後はまだ温かく軟らかいのですが、自然に冷えて固まります。再び金属検出機と重量チェッカーを通し、検品しながら箱詰めして出荷します。
【広報誌2025年5月号より】