サラダ、カルパッチョ、ジャム、ぽん酢など、
皮まで余すことなく食べたい「産直あまなつ(有機栽培)」。
話を聞くと、果樹園を森や山のような環境に近づけて、
微生物の力を借りながら栽培する生産者の姿がありました。
鹿児島県阿久根市の山のふもとで「産直あまなつ(有機栽培)」を育てる中村農場の中村学さんと妻・千春さん。2人とも関東地方の出身です。コープの産直産地である鶴田有機農園(熊本県)で3年間の修業をへて、9年前に樹齢40年のあまなつの木が約300本あったこの果樹園を引き継ぎました。果樹園のすぐ横に自分たちで家を建て、3人の娘さんたちと暮らしています。
「もともと環境問題に関心があり生き物が好きなので、有機栽培をやりたいと思いました。まろやかな酸味でえぐみのない、爽やかでさっぱりした味わいのあまなつ栽培を目指しています」と学さんは話します。
阿久根は海風が強く、風がミネラルを運んでくれます。雨もそこそこ降りますが、水はけが良い土壌。日当たりも良く、1年の平均気温が18度と、温暖な気候です。
「夏の作業はとても暑くて大変です。普段の作業は妻と2人でやっていますが、2人とももう50代。体を壊さない働き方をしようと話しています」とにこやかに話を続けます。夏の間はずっと草刈りに追われ、傾斜地のため体力を消耗するといいます。
学さんはあまなつ栽培の春の剪定と土壌について次のように話します。 「4月から6月頃まで続く剪定作業では、風通しを良くし、どこについた実にも日が当たるようにするのが目的です。木は極力さっぱりと切りますが、できるだけ収穫量も取れるように考えながら枝を切ります。剪定がしっかりできると、その後の育ち方がとても良くなります。
あまなつは果樹で、もとは森の生き物です。だから土は、森や山のような状態が好ましいんです。そういう土を好む微生物が増えると、微生物が肥沃な土壌を作ってくれます。自然の状況になるべく近づけたいと考えて、木のチップを入れることもあります」
忙しい収穫の時季だけは、人を増やして作業しますが、日本中で人材不足。千春さんの「ママ友」にも声をかけたり、人手の確保もしながら栽培をしています。 「お届けして『あまなつって、こんなにおいしかったっけ?』と言っていただけたり、『人にも贈ることにしたよ』というお言葉をいただくと本当にうれしいですね。有機栽培をするのは、自分たちのためでもあります。これからも家族で食べたいものをお届けします」と学さんは話してくれました。
「あまなつはさっぱりしたいときにぴったりですよ。ぜひ組合員の皆さんに召し上がっていただきたいです。ほんのり甘くて、“運動の後のビールのひとくちめ”みたい、って私は思っています! 皮もジャムなどにして食べられます」と満面の笑みで千春さんがいいました。
サラダ、カルパッチョ、ジャム、ぽん酢など、そのまま食べる以外にもさまざまな食べ方ができます。ぜひお試しください。
3月末に前年度の収穫が終わると、肥料をまき土作りから始めます。木の枝を切る剪定を4~6月頃まで続け、虫がいる・病気がある場合には、それらも切り落としていきます。 いろいろな病害虫には予防がとても重要で、防除は梅雨前に有機認証で認められた自然由来の農薬を2回ほど散布しています。4月には花を摘んで、アロマオイル(ネロリ)や化粧品の原材料としても出荷しています。
6月には夏の肥料をまいて、7~9月には、なりすぎている実の数を減らす摘果を行います。同時に病気につながる枯枝を落とす作業もします。そして夏の間はずっと草刈りをしています。土手が多く傾斜地のため、時間がかかります。
9・10月には秋の肥料をまきます。夏枝・秋枝を切る作業もします(写真A・B・D)。春に芽吹き、花が咲いて木に栄養が余っていると新芽を食べる虫が発生し、この時季に枝を切らないと翌年の春、新芽に病気がうつり、実にうつってしまうのです。台風対策など、園の整備もします。
収穫は12月~2月半ばから3月末くらいまで続きます(年によります)。朝8時から夕方5時までひたすら収穫します(写真E・F)。7人から10人くらいで収穫作業をしています。収穫したら手作業で1つずつビニール袋に入れて貯蔵し(G・娘さんもお手伝い)、出荷のタイミングで洗浄して乾燥させ(H)、選別機でサイズ分けして検品後に出荷です(I)。
【広報誌2024年2月号より】