車でやっと上ることができる急斜面を行き、山を切り開いた土地に斜めに広がるのは、紀ノ川農業協同組合(和歌山県紀の川市。以下、紀ノ川農協)の生産者・吉岡利晃(としあき)さんのキウイフルーツ畑。「井上さんの畑はもっと行くのが大変な場所だよ」と笑います。吉岡さんの畑で、紀ノ川農協キウイ部会長でもある吉岡さんと、前キウイ部会長で、有機部会長を務める井上雅夫さんに話を聞きました。
紀ノ川農協では46年ほど前からキウイフルーツを栽培しています。井上さんと吉岡さんは、2000年に国の「有機JAS」規格ができる以前から、化学肥料や農薬に頼らず、自然の力を生かして育てる有機栽培でキウイフルーツを育ててきました。
現在、60人の生産者のうち17人が有機栽培で生産しています。2人ともいろいろな果物を育てていますが、「キウイはつる性の植物で、他の果物より枝を動かせて育てやすいよね」と口をそろえて言います。「収穫も手でポロッととれるんですよ」と吉岡さんは笑顔。「剪定(せんてい)・受粉・収穫」が特に大事だと2人は言います。
収穫は毎年11月中に一気に行い、12月半ば頃から2月いっぱいは次の収穫に向け枝を整える剪定をします。「収穫後、葉が落ちたら、はさみで枝の量を調節します。一番実がなる枝を見極めて残していきます。日の光で実がおいしくなるから、よく光が当たるように。剪定でキウイの着果数や大きさの7~8割が決まります」と吉岡さん。剪定したら180cmほどの高さの棚に、枝を固定し割り当てていきます。
4月、つぼみがつくと摘蕾(てきらい)をします。花は、真ん中の本花と脇に咲く側花とがありますが、本花のつぼみだけを残し、側花や変形したものを取り除く作業です。
キウイフルーツはオスの木とメスの木、両方がないと実がつきません。
「オスの木・メスの木は品種が違い、オスのほうが5日ほど早く花が咲くんです。咲いたら受粉作業の準備です。すぐに花を取って機械で花粉を取り出し、メスの花が咲いたら風でそれを飛ばして受粉させます」と井上さんが説明します。
実がなると6月~7月にかけて変形果を落とし(摘果)、夏の暑い時期には水をまき、草を刈ります。
有機栽培の場合、毎年畑で収穫前に監査があり、規格通りに栽培がされているか確認されてから収穫します。収穫後は冷蔵庫で保管し、紀ノ川農協で選別してからコープに出荷します。全てを出荷するまで4~5カ月。すぐに出荷する分は追熟させ、その他は徐々に甘くなっていきます。
「長いことやっても、経験したことがない自然環境の変化があります。それを乗り越えられるように、キウイ部会で集まり、他の産地とも情報交換して技術を磨いています」と井上さん。
農業は毎年生産条件が変わって、毎年1年生みたいです。そんな中で、糖度が高くて、おいしいキウイを作りたいと思っています。うちでは毎朝、自分たちの作った果物が食卓に出てきます。ぜひ、皆さんも朝食などで食べてください!」吉岡さんは最後にこう話してくれました。
食卓を豊かにすることはもちろん、食べると心もちょっと豊かになる果物。国産キウイフルーツをぜひ召し上がってみてください。
有機JAS認証
化学的に合成された肥料や農薬の使用を避けることを基本として、自然界の力を生かし生産する有機栽培がされた商品が受ける認証。このマークがないものは「有機」「オーガニック」と表示できません
【広報誌2022年2月号より】